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弁護士と行政書士の業務はどう違う?

弁護士の業務と行政書士の業務の違いを説明するときに、争いのない限り行政書士「も」できる、と表現されることが多くあります。つまり、行政書士業務は、当然、弁護士も行うことができます。

では、行政書士制度は、どうして存在するのでしょうか?

この記事では、各士業の制度の歴史的なルーツを辿って、行政書士制度の存在意義を理解するヒントを探してみたいと思います。

弁護士の業務

「弁護士」と聞いて、どのようなイメージが浮かびますか?かの有名なカプコンの「逆転裁判」シリーズには、法廷で悪と戦う青年弁護士、成歩堂龍一が、登場します。被告人の無罪を勝ち取ることを正義に戦いますが、成歩堂に相対して御剣怜侍という検察官が、これまた別の「正義」を振りかざし壁となって立ちはだかります。

法廷(=裁判所)にて弁護士は、強大な国家権力の暴走が「冤罪」を生み出す危険から刑事事件で訴えられている側(=被告人)を護ることを使命としています。憲法37条3項は、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」と定めているのは、そのためです。

また、弁護士は、お金の貸し借り・離婚時・相続時のトラブルのときには争いを解決するために登場し、民事事件となった際は、依頼者の立場にたって「法的に守られるべき利益は何か」を模索し、依頼者の正当な利益を実現して紛争を解決するために活動します。法廷外においても、幅広い法律知識を活かして、法人のアドバイザーを務めたりもします。

行政書士の業務

国家資格者である行政書士の主な業務は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することやそれらの書類の作成について相談をすることです。そして、官公署への提出を代理で行うこと等です(行政書士法第1条の2・第1条の3第1項)。

「官公署」とは「国、地方公共団体およびその他の公の団体の諸機関の総称」をいい、代表的なところとして、省庁・都道府県庁・市町村役場・警察署・裁判所・法務局・労働基準監督署・保健所・出入国在留管理局がイメージできます。また一般的な「官公署に提出する書類」とは、いわゆる許可や認可手続に必要な申請書類のことを指します。なにか事業を始める際には、官公署に書類を提出して、そのトップ(行政庁)から許可・認可を受けなければならないことが多く、その手続のサポートをするのが、行政書士です。

弁護士と行政書士の業務の違い

行政書士の業務の一つに「権利義務又は事実証明に関する書類を作成」することがあります。権利義務に関する書類で行政書士がよく携わるのは「遺産分割協議書」です。これは、相続が発生した際に、遺された財産を遺された者たち(相続人)が集まって、どのように分けるか話し合った結果を表した書面ですが、もし、協議中に揉めてしまい、いよいよ収拾がつかなくなった場合には、行政書士業務から外れてしまいます。

これは、弁護士法第72条「弁護士又は弁護士法人でない者は(…)、一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と定めるところ、この「法律事務」が、法的な紛争に関して、という意味合いで解釈がなされることから導かれます(事件性必要説)。

また、行政書士は、官公庁に提出する書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない(行政書士法第1条の2第2項)との制限から、裁判所や労働基準監督署など一部の官公署に提出する書類は作成することができません。

各士業には、各士業にしかできない「独占業務」が法律に定められており、行政書士は、上記のように、許可認可申請業務について独占しています。実は、弁護士も「一般の法律事務」として行うことができます。つまり、弁護士は制限なく法律事務を行うことができます。

そもそも、法律を扱う職業の歴史は、古代ギリシア・ローマ世界まで遡ります。社会のなかでルールや、それを適応した紛争解決のケースが蓄積され複雑化していきます。複雑化していくと、豊富な知識を持つ者のニーズが生まれ大きくなっていくことは、想像するに難くありません。

法律家である彼らは、王政となった際には、国王の顧問的な役目を果たしました。国王が創る法律を「勅法」といいますが、この勅法の一部は、法律家によって起草されました。また、編纂された法典の文言を解釈し、そのルールを研究するとともに、自己の見解をまとめていきました。

このように、弁護士には、遠い過去にルーツがあります。そして、古代ローマから各地に法律家たちの知識が伝わり、グローバルな職業となっているわけです。そして、グローバルな制度である弁護士制度は、明治時代に、フランス等の訪米諸国から日本に輸入され、「代言人」制度となりました。

一方、行政書士の歴史は比較的新しく、その前身は、1872(明治5)年の太政官達「司法職務定制」による「代書人」です。弁護士とは異なり、あくまでも日本独自の職業として発展してきました。

弁護士と行政書士は、もともと働くフィールドが異なっていましたが、やはり弁護士はその世界的なルーツからして、法律全般を司る者としての確立された地位があり、日本国内においても職域は制限なしとして扱われるようになりました。

「じゃあ全部、弁護士に任せればいいじゃない」という言葉が聞こえてきそうです。しかし、許認可に関する業務を専門でやっている弁護士に、少なくとも私は会ったことがありません。

それは、弁護士しかできない業務、つまり、紛争を解決するための法律事務だけで膨大な量となり、そのほかの業務にまでは手が回らないという時間的な状況のせいもあるのかもしれませんが、”行政書士といえば許認可に関する業務”という定式が定着しているから、という理由もあるかもしれません。これは、代書人時代からの先人の努力のおかげであるとも言えるでしょう。

まとめ

弁護士法第3条等が定めるように、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務」としています。仮に、他の士業が弁護士の独占業務を行ってしまえば、それは「非弁行為」で罰せられてしまいます。

弁護士には世界的ルーツがありますが、行政書士は、日本独自の制度として発展してきました。この発展の裏側には、代書人時代からの先人たちの努力のおかげであり、また、国民の方々のニーズが、現代まで途切れることなく存在したからです。

これからの行政書士制度がどのようになっていくかは、ニーズを見極め、先人に習って私たち行政書士が守りつづけでいかなければならないのかもしれません。

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