行政書士が扱える法定業務

行政書士として行える業務を説明します。

行政書士の業務

行政書士が依頼を受け報酬を得てできる独占業務は以下の3つです。

  1. 官公署に提出する書類の作成
  2. 権利義務に関する書類の作成
  3. 事実証明に関する書類の作成

ただし、他の法律(弁護士法や税理士法など)で制限されているものを除きます。

依頼を受けて報酬を受けなければ、誰でもやっていいということになります。民生委員等のボランティアの方で、役所への手続を行っている人は現実にいます。

なお、「報酬を得て」というのは現実の現金授受だけではありません。報酬の代わりに他の仕事を得たりするとだめです。会社が「行政手続きをタダでやるからこれ買って」というのがダメな例です。

1.官公署に提出する書類の作成

行政書士資格がない人がやると行政書士法違反で1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。ポイントは、独占業務は手続きではなく、書類の作成ということです。書類の作成の中には、電磁的記録(パソコンなど)での書類作成やインターネットでの申請フォームへの入力も含みます。

官公署に提出する書類の作成は、簡単に言えば役所へ提出する書類の作成です。そのため、かなりの広範囲の書類が該当します。

ただし、裁判所へ提出する書類、法務局へ提出する登記申請書、税務署へ提出する税務関係書類、労働局へ提出する労働保険関係書類などは作成できません。これらは、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士などの他士業の独占業務となります。これらに規定されていない役所への提出する書類は行政書士業務ということになります。

2.権利義務に関する書類の作成

次に権利義務に関する書類の作成ですが、契約書や遺産分割協議書の作成が該当してきます。読んで字のごとく、その書面を作ることで、当事者が権利と義務が発生する書類ということです。ここで注意が必要なのは、当事者が争う可能性(紛争性)があるかです。紛争性のある書類を作成することは、弁護士の独占業務です。

将来のどの時点まで紛争性を考慮するかは、見解がわかれています。契約段階では争いがなかったが、契約が履行されていく段階で、契約内容の変更を含めて争いがある可能性があります。すべての事柄に紛争性があるといえますが、そうなってしまうと、行政書士法に規定された権利義務に関する書類の作成をすることができることが形骸化されてしまいます。

実務的には、依頼の時点と書類作成時点で紛争性がなければ、業務を行うことになります。ただし、行政書士の書類作成不備で紛争性が発生するのは論外です。

3.事実証明に関する書類の作成

最後に、事実証明に関する書類の作成です。これは、議事録、図面、財務諸表などの作成が該当します。判例上は、事実証明に関する書類とは、社会生活にかかわる交渉を有する事項を証明するにたる文書とされています。

分かりやすくいえば、「作成日時点で、こうなってます。」という書類です。自動車の車庫証明はこの事実証明になります。

注意点としては、測量などの図面で、公共性のあるものは土地家屋調査士の独占業務となります。登記目的でない測量図面の作成は行政書士業務に該当してきます。

また、財務諸表(決算書)の作成をすることができますが、税務確定申告書は税理士の独占業務となるので、あくまで財務諸表(決算書)の作成までになります。税理士は、税務確定申告書の付随業務として財務諸表(決算書)の作成を行えます。

独占業務以外の法定業務

独占業務は前述の3つとなりますが、そのほかにも独占業務ではないですが、行政書士法に規定されている業務(法定非独占業務)があります。

  1. 行政書士が作成することができる官公署に提出する書類の意見陳述のための手続(聴聞又は弁明の機会の付与)を代理すること。
  2. 行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立て手続き(審査請求、再調査の請求、再審査請求等)について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること(特定行政書士のみ)。
  3. 行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
  4. 行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

なお、これらも他の法律で制限されているものを除きます。

その他の業務

行政書士でなくてもできる業務は、もちろん行政書士も行っていいです。例えば、会計記帳業務、給与計算業務、ホームページ制作等があります。これらを事業とする代行会社もあります。

他にも、人生相談や経営コンサルなども行政書士業務と相性がいいといえるでしょう。それ相応の専門知識が必要ですが、これらと行政書士業務がかけ合わさった時は、行政書士の独占業務だけでは得られない報酬が期待できます。

特に、許認可が絡む案件は、経営戦略を立案する際に考慮されなければいけない部分です。事業を行っていく際にどのように許認可を維持していくのか、また新たな事業でどのような許認可が必要になってくるのか。経営者へ情報を提供することができます。

プロフェッショナルな行政書士こそ、各業務の法令に精通し、コンサル業務を行っていると思います。

行政書士業務の注意点

行政書士の独占業務は広範囲となります。ほかの法律で制限されていないかを確認することは必須となります。

このあたり、行政書士法違反をしている業者やコンサルタントもいますので、見つけた場合、証拠を集め、各行政書士会に通報するようにしましょう。

例えば、自動車販売店が車を売りたいために、車庫証明の車庫の寸法を車両が入る嘘の寸法を記載して証明を得る。実際は車が道路にはみ出してしまう場合は、通行人の進路を妨げる可能性があります。

許可を得るために虚偽の申請をすることは、社会秩序の安定に影響が出ます。そうならないために、行政書士制度があるといってよいでしょう。

鈴木 篤

特定行政書士。合同会社法テック代表社員の鈴木です。実務のスペシャリストの行政書士を育てることが日本社会の発展に貢献するとの思いから行政書士カレッジを運営しています。

おすすめ講座