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行政書士と司法書士の業務はどう違う?

行政書士と司法書士は、同じ四文字ということもあり、けっこう間違えられることが多くあります。

私が行政書士になったばかりの頃は、行政書士の仕事については一応説明できても、司法書士の仕事については、なかなか説明できなかったりしました。

この記事では、行政書士および司法書士の主な業務の説明と、試験についてお話します。違いについて知識として身に着け、士業間で連携を取ることを目指しましょう。

行政書士とは

国家資格者である行政書士の主な業務は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することやそれらの書類の作成について相談をすることです。そして、官公署への提出を代理で行うこと等です(行政書士法第1条の2・第1条の3第1項)。

「官公署」とは「国、地方公共団体およびその他の公の団体の諸機関の総称」をいい、代表的なところとして、省庁・都道府県庁・市町村役場・警察署・裁判所・法務局・労働基準監督署・保健所・出入国在留管理局がイメージできます。また一般的な「官公署に提出する書類」とは、いわゆる許可や認可手続に必要な申請書類のことを指します。なにか事業を始める際には、官公署に書類を提出して、そのトップ(行政庁)から許可・認可を受けなければならないことが多く、その手続のサポートをするのが、行政書士です。

もっとも、行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない(行政書士法第1条の2第2項)との制限から、裁判所や労働基準監督署など一部の官公署に提出する書類は作成することができません。

司法書士とは

国家資格者である司法書士の主な業務は、法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること、そして、登記又は供託に関する手続について代理することです(司法書士法第3条)。「登記」とは、不動産の所有権移転等を行い、不動産の名義が変更された場合や法人を設立する際、法人の住所や役員が変更になった際など、そのことを誰でも確認できるようにデータを書き換える手続のことをいいます。

「登記」を行わなければならない事柄は、法律で決まっています。そして、登記を行うまでの準備に必要な、不動産関係の契約書や、法人の議事録等も業務として作成することができます。この、契約書や議事録は、行政書士も作成することができます。

業務の関係

行政書士と司法書士とは、業務の分野が重なることがたくさんあります。

会社設立の際には「定款」という「会社の憲法」をまず作成し、公証人の認証を行うまでの手続は、行政書士が行いますが、その後の法人設立登記手続きは、司法書士が法務局にて行う業務となり、行政書士が行うことは法律で禁じられています。

また、行政書士のお客様は、法人のみならず個人の方も多く、主に「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成を行うことがあります。たとえば、契約書や株式会社の株主総会議事録など。つまり、新しい権利や義務が生じたり、あるいは消滅したりする場合に、そのことを証拠として文書化しておくわけです。

その「権利義務に関する書類」が登場する分野に相続があります。

相続手続の際には、遺言や遺産分割協議書の作成は、行政書士が行いますが、その遺産分割協議によって、不動産の所有権移転登記の必要が生じ法務局での手続を行ったり、相続放棄の手続が必要となり家庭裁判所で手続を行ったりする場合には、司法書士が担当をすることとなります。つまり、司法書士の独占業務なのです。

一方で、日本国籍取得の手続(帰化許可申請)は、法務局における手続ですが、もちろん、そもそも官公署である法務局には、行政書士もその書類を作成・提出できます。つまり、共同独占業務なのです。

地方出入国在留管理局への提出書類については、司法書士が直接的に関与することができず、行政書士が行う独占業務となります。

試験科目と試験の難易度

行政書士の試験科目は、つぎのとおりです。

試験科目 内容等
行政書士の業務に関し必要な法令等(出題数46題)
  • 憲法
  • 行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)
  • 民法
  • 商法
  • 基礎法学
行政書士の業務に関連する一般知識等(出題数14題) 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解

(一般財団法人行政書士試験研究センターより掲載)

司法書士の試験科目は、つぎのとおりです(司法書士法第6条)。

試験科目 内容等
択一式(出題数70題)
  • 憲法 〔3問〕
  • 民法 〔20問〕
  • 刑法 〔3問〕
  • 商法(会社法) 〔9問〕
  • 民事訴訟法 〔5問〕
  • 民事執行法 〔1問〕
  • 民事保全法 〔1問〕
  • 司法書士法 〔1問〕
  • 供託法 〔3問〕
  • 不動産登記法 〔16問〕
  • 商業登記法 〔8問〕
記述式(出題数2題)
  • 不動産登記法 〔1問〕
  • 商業登記法 〔1問〕

行政書士試験は、科目数こそ少ないものの、もちろん「行政書士」なので、行政法のウェイトが高く、かなり詳細な知識が求められます。また、行政書士試験は、基礎知識という科目があり、仮に法律科目の得点がよくても、基礎知識で一点の点数を取れない場合には脚きりになります。

司法書士試験は、科目数が多く、また記述もあります。民事訴訟法・保全法・執行法の知識も求められます。司法書士法についても出題があります。

まとめ

行政書士と司法書士では、お互い専門とする業務(他方は行うことができない業務)が分かれています。

いっぽうで、法人設立や、相続手続の分野では、片方の士業だけでは完結できない業務もあります。このときに、自分はできないから分からないと言うのではなく、行政書士と司法書士で、しっかりとした提携を結んで、スムーズに業務の引継ぎができるように準備しておく心構えが、お客様のサポートを第一に考える士業の鑑となると思います。

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