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新人行政書士の実務入門-法人設立の実務

法人設立の実務には、多くの士業が関わります。法人設立後は、税理士や社労士が顧問として関わることが多い中、行政書士は、法人設立の一番最初である、定款案作成の段階から携わることができ、設立後も、許認可業務につなげることができます。また、定款の内容自体が許認可の要件になっている場合もあります。

この記事では、行政書士の携わり方をまとめます。

法人設立の実務

法人設立業務は、①定款案作成、②法人登記、③設立後手続の三段階に分かれます。私たち行政書士が携わるのは主に①定款案作成と③設立後手続です。②法人登記については、司法書士に依頼するか、依頼者自身で行ってもらいます。

①定款案作成

法人を設立するためには必ず定款を作成しなければなりません。「定款」とは、法人の目的、組織等を定める「会社の憲法」といわれる非常に大事な文書です。特に、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)や、記載しなければ効力が発生しない事項(相対的記載事項)などがあるため、内容には注意を払わなければなりません。

③設立後手続

設立後手続である許認可の取得との関係でいえば、記載がなかった場合に、手続ができないというケースがあります。

例えば、中古車や古本等の販売を行う場合には、公安委員会(警察署)からの古物商許可が必要ですが、定款の事業目的の項に、「古物商」を行うことが分かるフレーズがあることが許可の要件となっているため、定款を変更しなければならなくなります。

また、資本金の金額も、定款案作成のときに決定されます。例えば、外国の方が法人を設立して、経営・管理という在留資格を取得したいと考えている場合には、資本金が500万円以上である必要があります。

また、役員の就任承諾書や資本金の払込証明書等の、登記申請に必要な登記申請書以外の添付書類を作成します。添付書類の作成については、行政書士によって作成するかしないかの対応が分かれます。(注意:行政書士は、登記申請書の作成はできません。)

お客様が法人設立をしようと考えるのは、何らかの事業を行うためであり、その事業の多くは、許認可が関係しています。上記のように、定款の内容と、許認可取得は大きく関連しています。そこに法人設立の最初の窓口として行政書士がサポートする意義があるのです。

法人の比較

法人のカタチはいくつかありますが、いずれの場合も、上記のように、許認可を見据えた定款案を作るために、事業目的、資本金の金額、役員の構成を検討していくことになります。

株式会社の資本金について、いくらにするのが良いか、という質問に対する一般的な回答は、大きい金額であれば、それだけ信用が上がり、融資申請の際などに有利になるというものですが、行政書士としては、許認可からの回答も求められます。

株式会社にするのか合同会社にするのか、どちらが良いのか、という相談を受けることがあります。このことは、株式会社と合同会社の性質の違いをまず知っておく必要があります。

合同会社は、他の法人と比較して、設立時の費用が最も安く、簡易迅速に設立ができます。また、株式会社よりも維持費用が安く済みます。

合同会社は、社員(設立メンバー)が出資し、社員が経営するという点で、ミニマルな構成で意思決定ができ、機動的な経営ができます。この二つが分離している株式会社とは本質的に異なります。

いっぽう一般社団法人は、2名以上の「設立時社員」が必要です。また「非営利法人」と呼ばれるように、営利を目的としていません。この2つが、株式会社・合同会社と違う大きな点です。

非営利法人である一般社団法人は、どのような事業形態で多いのか、知っておくのが肝要です。

業務の流れ(株式会社の場合)

①定款案の作成

法人設立をして、どのような事業を行うのかをヒアリングし、定款に記載する事業目的を確定させていきます。

②公証人への定款案の事前確認依頼

収入印紙代4万円がかからないため、株式会社の設立の際には、電子定款を選択する意義があります。もっとも、行政書士があらかじめ電子定款システムを導入しておく必要があります。

定款原案を作成し、メールかFAXで公証役場に事前チェックのお願いをします。この際、発起人の委任状及び印鑑登録証明書、実質的支配者となるべき者の申告書の3点をメールで送信します。

③定款に係る委任状の取得

公証人からのフィードバックを参照した後、「電磁的記録である原始定款を作成し,電子定款認証を請求して電子定款を受領する手続」等を私たち行政書士に委任するための委任状と、確定した定款案を重ねて綴じ、各ページに発起人に契印をしてもらいます。

④定款のオンライン申請

法務局「申請用総合ソフト」から電子申請を行います。

⑤ 認証日の確定

認証請求、電子定款の受領まで代理する場合には、行政書士が公証役場に赴きます。印鑑登録証明書と、CD-R、上記委任状、行政書士証票、行政書士個人の身分を証するもの(運転免許証やマイナンバーカードなど)、行政書士職印、行政書士個人の認印、認証料金50,000円(と数千円)などの、公証役場から指定されたものを忘れずに持参しましょう。

⑥資本金の払込・法務局での設立登記申請

なお、この段階で、法人印が必要となります。定款案作成の受任をした際にお伝えしておきましょう。

行政書士は、登記申請をしてはなりません(司法書士法違反になります)。登記申請については、司法書士を紹介するか、本人申請で対応してもらいましょう。業際はきちんと遵守することが必須です。

報酬について

基本的な小規模株式会社向けの定款案作成では、おおむね5万円~という報酬金額の設定が多いでしょう。

なるべく工数を減らして迅速に設立手続を進めるために工夫することも大切です。定款の定型を決め、会社を設計する上でのポイントとなる項目をリストにまとめて、すぐヒアリングできるようにします。また、お客様に収集してもらう書類を明確にし、いつのタイミングでどの書類が必要かを事前に伝えておくことで、価格も抑えられるかもしれません。

もっとも、組織が複雑な場合や、コンサルを含めて組織編成を行ったり、設立後の補助金申請業務に繋げたり、プラスアルファがある場合は、別途の料金を設定することも検討できます。

まとめ

以上のように、法人設立では、まず定款案作成の段階で行政書士がプロとして携わります。

特に、設立後の許認可が控えている場合には、許認可の一要件として、事業目的や資本金額に適切な記載がなされている必要がありますので、事業目的をヒアリングしていく中で、どのような許認可が必要か把握しましょう。

行政書士と法人設立に関する業務は、非常に相性が良いといえます。

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